N製作所も、そのひとつです。
同社は油圧・空圧機器の組立、圧力容器、自動化搬送装置、各種板金を受注生産する製缶板金メーカーです。
従業員は社長以下69名で、年商11億円です。
メーカーを例にとるわけですが、読者は「メーカー」ということにこだわることはありません。
つまり、これからお話するのは”工程”の話で、仮りに製品を生産するメーカーでなくて「サービスを提供する(流通小売業やサービス業の)企業」であっても、いわば”段取り”が重要なカギで、その意味では同じことだからです。
ですから、製造会社ならではの専門的な用語は文字づらだけを流し読みしていただいて、その本質的な意味内容を読み取ってもらいたいのです。
さてN製作所の置かれている状況を、いま少し説明しておきますと、仕事は、ほとんど受注生産です。
それも、多品種少量生産どころか、もっぱら一品生産といったほうが当たっています。
その点でも、多様化、個性化のニーズに応える”サービス”と似ています。
製品の性格上、作業員の熟練度に依存するところが多く、製造はおおむね3人からなる班によって材料取りから検査完了まで責任をもって担当します。
いわば”職人集団”による取り組みません。
で、それぞれ、いい仕事をしています。
そのせいか日報をつけたり記録をとっての報告になじまず「良い物を納期までに仕上げるから、仕事だけに集中させてくれ。
余計なことはサセナイデクレ」という雰囲気が現場に満ち満ちています。
実際、やらせればいい仕事をするのですから、その点をとやかくいう筋合いではあります。
N製作所の社長は「顧客の要求を満足させる」をモットーとしていました。
すなわち、これが経営上の至上命題(方針)です。
この会社の専務が営業部長を兼ね、常務が製造部長を兼ねています。
製造部長は、もちろん従業員の大半を占める製造部門を束ねるところですが、同時に常務という経営の立場から「顧客の代弁者である営業」というものの意味を承知しており、難しい立場にそれでも、不良がまったくなかったわけではありません。
結構受注先からクレームが寄せられていたのです。
その製造部長が立てた某年度目標は「営業の要求を満たす」「1人当たり加工高1200万円」「納期遅延ゼロ」というものでした。
たぶんに営業よりのニュアンスがあります。
立場上、仕方のないところでしょうし、経営方針からして当然ともいえます。
しかし、露骨に営業の肩をもったのでは、製造部門の意欲をなくします。
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